ニュー・アムステルダム・シアター
ニューヨークを訪れる目的の一つにミュージカルをあげる人は多いですが、作品ばかりに目がいって、劇場自体をじっくり見たことがある人は少ないかもしれません。
また観劇など興味がないと思っている方、ニューヨークの歴史的場所を見学しても、劇場前を簡単に通り過ぎてしまう人は多いでしょう。
タイムズ・スクエアに位置する劇場のほとんどは1900年代初頭に建設されたものです。
建築的な意義は今でもとても重要です。

現在ブロードウェイで利用されている最も古い劇場ニュー・アムステルダム・シアターを紹介します。
ニュー・アムステルダム・シアターは、世界中で人気のミュージカル「ライオンキング」が初演された、現在ミュージカル「アラジン」が公演されている劇場で、フォーティセカンド・ストリート(42ストリート)の7と8アベニューの間で幕を開けたのは、1903年10月26日のことです。
建築家のヘンリー・ハーツとヒュー・トーレントが設計したインテリアは、初演のシェイクスピア作「夏の夜の夢」に合わせたものです。
初演翌日のニューヨーク・タイムズ紙には芝居に関しての批評は少なく、劇場建築の素晴らしさが絶賛されました。
ニューヨークで最も美しい建物として名を挙げたのです。
劇場のロビーの大理石の壁の装飾となっている彫刻は、シェークスピアの戯曲やワグナーの「ニーベルングの指環」の場面からのものです。

1913年には、ミュージカル「ジークフリード・フォリーズ」がオープン。魅力的な舞台美術、豪華な衣装、当時の大スターの出演、そして何よりも美しいコーラスの女性たちがこの美しい劇場に花を添え、14年間もロングラン公演されました。

1929年、ウォール街の株暴落による世界恐慌は劇場界にも大きな影響を及ぼし、ニュー・アムステルダム・シアターは1936年に閉館してしまいました。

1980年代半ばからのアイ・ラブ・ニューヨーク・キャンペーンにより、ニューヨークは犯罪の街から魅力的な街に変わりつつあった1993年、映画やテレビ、またアミューズメント・パークとして絶頂の人気を持っていたウォルト・ディズニー・カンパニーがブロードウェイ・ミュージカルに進出する為に、ニュー・アムステルダム・シアターを99年リースで借りたのです。
2年間を掛けての修復の後、1997年のオープニングはディズニーのアニメ映画「ヘラクレス」のプレミア上演会でしたが、同年後半、ミュージカル「ライオンキング」がオープンし、ニュー・アムステルダム・シアターの名をまた輝かせたのです。
2006年、「ライオンキング」は、別の劇場に移動し、「メリー・ポピンズ」に劇場を受け渡しました。現在は、ディズニーのミュージカル劇場としての名のごとく、「アラジン」が2014年よりロングランを続けています。